ミュージックDVD

男は右で、女は左。
　一昔前のハリウッドのミュージカル映画のような雰囲気で、気楽に楽しめる作品でした。『メリー・ウィドー』のように耳に残るメロディーがないものの、ビジュアルに関しては素晴らしく、パリの下町のセットも、細かい部分まできちんと作られており、主演二人が美男美女で、ヴァル・キルマーとマイケル・ダグラスを足して二で割ったような容貌のルクセンブルク伯爵のエバハルト・ヴェヒターは、実際に男爵の称号をお持ちだとか、放蕩三昧の貴族役にぴったりです。二人の貴族をとりこにする相手役のリリアン・キースは、どことなく、女優のジェーン・シーモアをソフトにした感じで、アールヌーボーの佳人といったところでしょうか。
浮き立つような幸福感
レハールの主要作で、オペレッタらしい気楽なハッピーエンディングのものはこれが最後となる。それだけに、後期作品に匹敵する旋律美に加え、浮き立つような幸福感にあふれており、ゆるゆると無限の夢を追っていく独特のレハール節をたっぷり堪能できる。

ヴェヒターの伯爵、クンツの侯爵、ウィーンを代表する二大バリトンが演技と歌を競い、ヘルガ・パポウシェク以下の若手も奮闘。演出は手堅いものだが、甘い物語と音楽をテンポよく華やかな映像に乗せてつづり、作品そのものを楽しむには最適のものといえるだろう。ただし、ラストに粗っぽい編集があり、全く校正していないライナーノートともども減点材料である。